2026年4月、中国のゲームシーンにひとつの異変が起きた。武漢のデベロッパー、武漢多趣信息(Wuhan Duoqi Information)が放ったRTS(リアルタイムストラテジー)形式の小ゲーム『占城大師(Zhancheng Dashi)』が、主要プラットフォームで記録的なセールスを叩き出している。4月12日の「抖音(Douyin)」リリースからわずか1週間で売上トップ10入りを果たし、最高2位まで上り詰めると、続く5月18日の「微信(WeChat)」版でも配信6日目にしてトップチャートの常連となった。

























巨大市場の「空白地帯」を突いた、RTSのカジュアル化
先日開催された「2026年微信小ゲーム開発者大会」の報告によれば、プラットフォーム全体の月間アクティブユーザー(MAU)は3億人を突破。月商1,000万元(約2億2,000万円)を超えるメガヒットが続出する中、その多くはRPGや合成パズルに偏っていた。モバイル市場では操作の煩雑さから敬遠されがちなRTSジャンルにおいて、『占城大師』は小ゲーム特有の「軽量化」を武器に、見事な差別化に成功している。
マイクロ操作を捨て、盤面把握に全振りした中毒性
本作の核となるのは、1対1の対人戦にカード要素をミックスした独自のゲームサイクルだ。プレイヤーはリソース(ゴールド)を消費して「地塊」をめくり、そこに出現する兵舎や防衛塔、金鉱などのユニットを戦略的に配置していく。特筆すべきは、従来のRTSで必須だった兵士一人ひとりのマイクロ操作やスキル発動をあえて排除した点だ。プレイヤーは「どこに何を建てるか」という大局的な意思決定にのみ集中できる設計となっている。
また、マップの構造やめくった地塊から何が出るかというランダム性が、強烈なリプレイ性を生んでいる。この運要素は、敗北の悔しさを「実力差」ではなく「運が悪かった」とマイルドに包み込むクッションとして機能しており、対戦ゲーム特有の心理的ハードルを劇的に下げている。育成面では『クラッシュ・ロワイヤル(Clash Royale)』のエッセンスを取り入れた宝箱システムを採用し、プレイヤーが自然に継続したくなる正の循環を構築した。
P2Wを感じさせない設計と、実力派の集客戦略
マネタイズの主軸はカードのアンロックだが、いわゆる「課金至上主義」とは一線を画す。ランダムな召喚システムによって、伝説級のレアカードを積んでいても実戦での出現頻度はコントロールされるため、PVPとしての競技性が損なわれていない。ユーザーの習熟度に合わせて適切なタイミングで課金を促す、淀みのない導線設計も高い収益性の鍵となっている。
マーケティング手法も極めて今日的だ。近年主流のドラマ型広告(実機とは異なるフェイク広告)に頼らず、実際のプレイ動画を前面に押し出した素材を多用。ゲームそのものの面白さをダイレクトに伝えることで、広告と実体験の乖離(货不对板)を防ぎ、ロイヤリティの高いユーザー層を確実にキャッチしている。
「占城ライク」という新ジャンルの誕生予感
これまで広告収益型(IAA)の小規模タイトルを主戦場としてきた武漢多趣信息が、これほどの「ダークホース」を世に送り出したことは業界に大きな衝撃を与えた。2024年に海外でVoodooがリリースした『Hex Warriors』がユーザー確保に苦戦した一方で、『占城大師』は巨大なユーザー基盤を持つ中国の小ゲーム市場を舞台に選び、プラットフォーム側の支援策(巨量引擎によるQ2インセンティブなど)を追い風に勝利を掴んだ。極限まで削ぎ落とされた操作性と奥深い戦略を両立した本作は、今後「占城ライク」と呼ばれるフォロワー作品を数多く生み出す試金石となるだろう。
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