金山軟件(キングソフト・コーポレーション)が発表した2026年第1四半期決算によると、売上高は前年同期比3%増の24億1700万人民元(約531億7400万円)と、概ね市場の予測範囲内で着地しました。純利益については投資収益の変動が大きく寄与し、前年同期比284%増の10億9100万人民元(約240億200万円)という大幅なプラス成長を記録。事業セグメント別では、好調なオフィスソフト部門に対し、オンラインゲーム部門はタイトル入れ替えに伴う戦略的な調整局面に入っています。




部門別売上では、オフィスソフトおよびサービス事業が前年同期比24%増の16億1300万人民元(約354億 8600万円)と伸長し、グループ全体の売上構成比は67%に到達しました。一方、オンラインゲームおよびその他事業の売上高は8億300万人民元(約176億6600万円)となり、既存タイトルの自然減により前年同期比で22%の減少となっています。しかし、この減益分は後述する新作タイトルの台頭によって一部相殺されており、現在は次なる収益の柱を育てるための過渡期にあると言えます。
『Goose Goose Duck』が爆発的ヒット:ユーザー基盤の拡大から収益化フェーズへ
第1四半期のゲーム事業における最大のトピックは、金山世游が独占代理を務めるソーシャル推論ゲーム『鵝鴨殺(Goose Goose Duck)』のモバイル版です。1月に中国国内でリリースされるやいなや、iOS無料ランキングで首位を独走。4月には人気ドラマ『甄嬛伝』とのコラボ施策が刺さり、App Storeの売上ランキングで5位に食い込むなど、圧倒的な集客力を発揮しました。
鄒涛CEOは決算説明会で、現在は「ユーザー基盤の最大化」を最優先事項としているとコメント。第2四半期以降も大型アップデートを継続的に投入し、コミュニティの熱量を維持しながら、精緻なマネタイズ設計を進める方針です。夏季休暇シーズンに合わせた7月のアプデを経て、下半期には本格的な収益貢献が見込まれています。
旗艦タイトル『剣網3』の「健全な後退」と開発ラインの選択と集中
金山ゲームの象徴である『剣網3』は、画質と技術面を刷新した最新資料片(エキスパンション)「暗影千機」をリリースし、コアユーザーの満足度向上に成功しました。一方で、意図的な戦略調整により、収益面では一時的な減少傾向が続いています。鄒CEOはこの調整が今後1〜2四半期は継続することを明言しており、財務面にポジティブな影響が現れるのは、重点アップデートを控えた第4四半期から来期にかけてになるとの長期的な展望を示しました。
また、開発子会社の西山居(Seasun Games)では、プロジェクトの「選択と集中」が加速しています。戦略的優先度の低いプロジェクトの整理が進む中、注目を集めていた『塵白禁区(Snowbreak: Containment Zone)』や『解限機(Mecha BREAK)』については開発を継続。特に『解限機』は7月のパブリックテストに向けて開発体制を強化しており、同社がグローバル市場への再挑戦をかける最重要タイトルとしての地位を鮮明にしています。
AI技術をゲーム制作の核心へ:ワークフローの抜本的改革
今後の成長戦略として強調されたのが、全社的なAI技術の導入です。研究開発コストは前年同期比14%増の9億4200万人民元(約207億2400万円)に達しましたが、その多くはAI領域への人材投資によるものです。雷軍会長の指示のもと、オフィス事業での知見をゲーム開発にも横断的に活用し、コンテンツ制作のパイプラインを劇的に効率化させる計画です。
鄒CEOは、AIによる新たな制作パラダイムの構築を西山居の核心戦略に据えており、アセット制作のハードルを下げることで、より多様なコンテンツを迅速に供給できる体制を目指しています。31年の歴史を持つ同社にとって、AIは単なる流行ではなく、生産性を根本から変革し、競合他社との差別化を図るための大きなチャンスであると位置づけています。
足元の減収は、いわば新旧交代に伴う「産みの苦しみ」です。高DAUを誇る『Goose Goose Duck』の育成、『剣網3』の価値再定義、そしてAIによる構造改革。これら三本の矢を同時に放つことで、数四半期の調整期間を経て、再び力強い成長軌道へ回帰することを目指しています。
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